これまでに、酸や重金属を添加した土壌で糸状菌が優占することから、土壌中の糸状菌数が汚染土壌の指標になりうる可能性を報告してきた。しかし、野外の酸性土壌中の微生物相を調査すると、必ずしもpHの低い土壌ほど糸状菌数が多いという結果は得られなかった。この原因として、人工的に汚染物質を加える場合、土壌に多量の汚染物質を一度に加えたことが考えられた。そこで、汚染物質(酸)を土壌に少しずつ添加していったときの土壌微生物相、土壌活性の変化を調べ、汚染の指標となりうるような微生物、活性の抽出を試みた。 つくば市内のマツ林から採取した土壌100g(乾土として)を内径5cmのガラスカラムに詰め、pH3の硫酸水あるいは蒸留水を上方から流した。3Lの硫酸を流した処理区、2Lの硫酸に続いてlLの蒸留水を流した処理区、3Lの蒸留水を流した処理区について、微生物数、25℃で培養時のCO_2発生量、アンモニア化成量、硝酸化成量、酵素活性を調べた。主な結果は次の通りである。 (1) 潅水前の土壌のpHは5.1であったが、潅水後は硫酸水3L潅水区が4.3、硫酸2L潅水区が4.5、蒸留水潅水区が5.6に変化した。硫酸水を潅水した土壌では、蒸留水を潅水した土壌に比べて、放線菌数が約半分に減少し、ダラム陰性紹菌数も約3分の1に減少していた。糸状菌数は、硫酸水潅水土壌と蒸留水潅水土壌で大差なかった。 (2) 酵素活性、CO_2発生量、アンモニア化成量は、硫酸水潅水土壌と蒸留水潅水土壌で差が見られなかった。硝酸化成量は、硫酸潅水土壌で少なかった。 以上の結果から、慢性的な汚染の指標としては、糸状菌数よりも放線菌数、グラム陰性細菌数が適していると考えられた。
|