研究概要 |
沈水植物やシャジクモ類(Mitella hyalina,Chara braunii,Chara globularis var.globularisなど)が,現在も旺盛に生育しているのが確認されている小川原湖(青森県)で、スキューバを用いて潜水し水草の群落調査を行うとともに、ソナーによる分布域の把握も行った。また照度、濁度、塩分濃度等の環境測定も行った。 シャジクモ類やヒルムシロ属の一部の種類については、同定が終わっていないので群落区分などはまだできていないが、北部の高瀬川放水路付近ではコアマモが、中部東岸ではヒメバイカモが、南部の砂土路川河口付近ではマツモが特徴的に分布していた。また群落の分布下限水深は北部の水域で5m、中部で3.5〜4m、南部で2.5〜3mとなり、北から南にかけて次第に浅くなる傾向が見られた。 垂直方向に3点以上の照度の測定を行った14ヶ所での吸光計数を求めると0.33(1/m)から0.89の値の広がりをもち、北部で低く、南部で高い傾向を示し、濁度においても南部で高くなる傾向が見られた。逆に塩分濃度は北部では0.07%であったが、南部の水面では0.03〜0.05%となった。こうした環境勾配は、上記の特徴的な種の分布や群落の分布下限水深の南北差をよく説明すると考えられた。 小川原湖でのような密度の高い調査ではないが、日本の主要湖沼でのシャジクモ類の分布を把握するために、琵琶湖、中禅寺湖、猪苗代湖、十和田湖などでも、船上からの採取調査を行った。十和田湖などでは比較的多く見られたものの、猪苗代湖では発見できず、また琵琶湖ではシャジクモ帯と呼べるものの分布は、マキノ町地先の一部の地域を除き確認できなかった。日本の多くの湖沼でのシャジクモ類の消滅の可能性が報告されてもおり(野崎ら、1995)、今後、広範囲に調査を行う湖沼の選定が問題となっている。
|