本研究の目的は、芳香族炭化水素の酸化分解に関与するオキシゲナーゼに着目し、土壌中のオキシゲナーゼ遺伝子の多様性の解析から土壌の持つ汚染予防機能を明らかにすることである。2年間の研究期間中、初年度である平成8年度では、土壌中のオキシゲナーゼ遺伝子の多様性および全土壌微生物DNAの多様性の測定方法の検討を行った。凍結-溶融法に基づき、土壌中の全微生物からDNAを抽出し、既知の16SrDNA増幅用ユニバーサルプライマーを用いてコントロール反応を行ったところ、良好な増幅が得られた。オキシゲナーゼ遺伝子増幅用のプライマーは、国立遺伝学研究所に登録されたオキシゲナーゼ遺伝子のDNAシークエンスを全て集め、各シークエンスのORF間で類似のシークエンスを有する部分を、ホモロジー解析用ソフトウエアClustalWを用いて解析し、近隣結合法を用いてオキシゲナーゼ遺伝子の系統樹を作成した。系統樹から一回のPCR反応で増幅可能なファミリー遺伝子の範囲を検討したところ、グラム陰性細菌群にみられるビフェニルジオキシゲナーゼ遺伝子およびカテコールジオキシゲナーゼ遺伝子が増幅可能であることが示唆された。そこで、それらの遺伝子を有することが知られている細菌数株をポジティブコントロールとして、各オキシゲナーゼ遺伝子のPCR反応条件を検討した。ビフェニールオキシゲナーゼ遺伝子の場合は、アニーリング温度を37℃にすることにより増幅が可能であることが明らかとなった。また、上記の様な遺伝子型の多様性に加えて表現型の多様性を同時に検討した。Biologプレートを用いた基質資化性の多様性の評価を施肥管理の異なる名古屋大学附属農場の土壌細菌群を対象に行ったところ、有機物を施用した土壌で資化できる基質のスペクトルが広いことが明らかとなった。
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