研究概要 |
持続的農業の実現のために、農耕地土壌にかかるストレスを低減化し土壌微生物の多様性を維持する予防技術を開発することが必要不可欠であると考えられる。そこで本研究では、土壌微生物群集の構造・多様性と土壌の持つ汚染予防機能の関係を明らかにすることを目的とした。 2年間の研究期間中、2年目に当たる平成9年度では、研究を計画した当初は知られていなかった新しい土壌中の微生物群集の構造・多様性の解析方法を用いて、遺伝子型の群集構造解析法と平行して行った。すなわち、土壌脂肪酸組成、土壌キノン組成およびBiologプレート基質資化能である。その結果を、土壌DNAのTm法による試験結果および16SrRNAのPCR-増幅産物の制限酵素断片長の多型性の結果と比較した。その結果、厩肥連用土壌では、微生物の多様性が高まり、特にグラム陽性高G+C含量の菌の割合が増えることが明らかにされた。また、これまで各種解析法を用いて一つの土壌を解析した例は無く、各種方法で得られる結果が必ずしも一致しないなど、解析方法間での問題点もはじめて明らかにされた。次に土壌の化学物質分解能を調べることにより汚染予防機能を評価した。ペンタクロロフェノールおよびクロロタロニル(2,4,5,6-tetrachloroisophthalonitrile)の二つのモデル化合物を対象とした。その結果、厩肥連用土壌で分解能が高まることが明らかにされた。その分解には、グラム陰性細菌あるいは糸状菌の寄与が大きく、必ずしも土壌全体の群集構造の変化とは一致しなかった。群集構造全体と働きのある微生物群の両方が解析できる方法の重要性が明らかにされた。
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