研究概要 |
持続的農業の実現のために、農耕地土壌にかかるストレスを低減化し土壌微生物の多様性を維持する予防技術を開発することが必要不可欠であると考えられる。そこで本研究では、土壌微生物群衆の構造・多様性と土壌の持つ汚染予防機能の関係を明らかにすることを目的とした。 2年間の研究期間中、1年目では、主に土壌DNAの抽出方法の検討および微生物群集構造・多様性の解析方法の検討、および土壌中のオキシゲナーゼ遺伝子のPCR増幅用プライマーの設計を行った。2年目では、研究を計画した当初は知られていなかった新しい微生物群集構造の解析方法として、土壌脂肪酸組成、土壌キノン組成およびBiologプレート基質資化能も取り上げ、土壌DNAの解析(Tm法による解析および16SrRNAのPCR増幅産物の制限酵素断片長の多型性の解析)と合わせて行った。また、化学物質分解能を土壌の汚染予防機能の指標とみなし、ペンタクロロフェノールおよびクロロタロニル(2,4,5,6-tetrachloroisophthalonitrile)の二つのモデル化合物の分解能を施肥管理条件の異なる土壌を用いて調べた。更に、オキシゲナーゼ遺伝子のPCR増幅反応の検討を行った。以上の実験から、厩肥連用土壌では、微生物の多様性が高まり、特にグラム陽性高G+C含量の菌の割合が増えることが明らかにされた。また、厩肥連用土壌で芳香族塩素化合物の分解能が高まる、すなわち汚染予防機能が高まることが明らかにされた。しかし、その分解にはグラム陰性細菌あるいは糸状菌の寄与が大きく、必ずしも土壌全体の群集構造の変化とは一致しなかった。 本研究は、各種微生物群集構造解析法を用いて一つの土壌を解析した初めての例であり、土壌微生物学および環境化学の分野に大きく寄与するものである。また、各種方法で得られる結果が必ずしも一致しないなど、解析方法間での問題点もはじめて明らかにされた。また、群集構造全体と働きを担う微生物群が必ずしも一致せず、両者の解析の重要性が明らかにされた。
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