研究課題/領域番号 |
08680608
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
佐藤 利夫 島根大学, 生物資源科学部, 講師 (40170766)
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研究分担者 |
鈴木 喬 山梨大学, 工学部, 教授 (60020385)
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キーワード | 電気透析法 / 水中ウィルス / 不活化 / 水の解離現象 / H+、OH-イオン / イオン交換膜 / イオン交換樹脂 充填系 |
研究概要 |
1.緒言 最近、飲料水や各種用水中に細菌類以外の有害微生物が存在することが明らかにされ問題視されている。特に水中ウィルスは感染力は日和見的ではあるが、現行の水処理法では除去・不活化できないことから、修景用水や親水用水等の再利用水を使用する現場では、再利用の頻度が増せば増すほど濃縮傾向にある。一方、我が国の人工構成は高齢化が急速に進んでおり、この対策として近未来的には出産を奨励する政策が取られる可能性も高いことから、非健常的な社会的弱書が増えることが予測され、これに伴い水中ウィルスによる日和見感染も増加すると考えられ、その不活化法を開発することは急務である。本研究は研究代表者および分担者が開発したイオン交換膜電気透析殺菌法を水中ウィルスの不活化にも適用すべく改良し、殺菌と同時に水中ウィルスの不活化も可能な電気透析殺菌系を確立しようとするものである。 2.実験 塩ビ製で厚さが1cm、膜面積が18.4cm^2の中空のセルを用いて基本的な6室系の透析装置を組み、各室の隔膜として陰極側より陰イオン交換膜と陽イオン交換膜を交互に配し、中央の脱塩室にはOH形またはH^+形とした陰または陽イオン交換樹脂を充填した(但し、脱塩室の隔膜は陰イオン交換樹脂を充填する場合両側とも陰イオン交換膜、陽イオン交換樹脂を充填する場合は両側とも陽イオン交換膜とした)。この電気透析系は前年度の進化型であり、イオン交換樹脂表面を利用して低電流密度で水の解離現象を起こさせ、それに伴い樹脂表面に形成される濃厚なOH^-イオン層により、効果的にウイルスの不活化を行おうとするものである。この脱塩室に0.1M-NaCl溶液に水中ウィルスの指標とされている大腸菌ファージQβを10^8PFU/mlの濃度で懸濁させた試料水を流速3ml/minで下方から上方へ連続的に通過させ電流密度を種々変えて透析を行った。なお不活化効果は、各電流密度条件で処理した処理水中のQβ生残数を測定し評価した。 3.結果 本透析系において、通電しない場合のQβ生残数は10^7PFU/mlであったが、陰イオン交換樹脂を充填した系では生残数が10^2PFU/mlまで低下し、顕著の不活化効果を示した。これに対し陽イオン交換樹脂を充填した系では、生残数が10^5PFU/mlまでしか下がらず、不活化効果は良好ではなかった。この時の処理水のpHは、陰イオン交換樹脂充填系ではpH11付近まで上昇し、逆に陽イオン交換樹脂充填系ではpH2付近まで低下した。しかし単に同様なpHとした生理食塩水中にウィルスを曝露しても、同様な不活化効果が得られなかったことから、本電気透析系のウィルス不活化効果は水の解離現象とpHの相乗的な効果であることが推察された。現在は陽・陰イオン交換樹脂混床充填系にて、処理水を中性に保ちつつウィルス不活化効果を発揮できる透析系を検討中である。
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