環境資源の持続的利用に関するコモンズ的管理システムの作動環境の分析とその成果の評価を行い、市場システムや計画システムとの比較・役割分担を明らかにした。その主な研究成果は、"On the social conditions of the sustainable commons management"として発表した。 環境資源のコモンズ的管理に関する近年の代表的な研究として、Ostrom(1990)のGoverning the Commonsがあげられる。この中でOstromは、長期持続型コモンズ存在条件として(1)境界の明瞭性、(2)利用ルール、用役ルールと地域条件の調和、(3)集合的選択の取り決め、(4)モニタリングの必要性、(5)段階化された制裁、(6)コンフリクトを調整するメカニズム、(7)コモンズを組織する権利(中央政府等からの独立)、(8)組織の入れ子状態とうい8つの条件のあることを指摘している。 上記の(1)〜(8)の条件をシステムの構成要素とその作動環境として再検討し、コモンズをとりまく外部要因と内部要因に分類した。さらに内部要因は、コミュニケーション、サンクション(制裁)、モニタリングの3つの要素から成っており、これら要素のゲーム論的検討から、サンクションとモニタリングには、トレードオフ関係があることを明らかにした。 コミュニケーションに関しては、Ostromら(1992)は、十分なコミュニケーションが保証されていれば、制裁の大小にかかわらず資源利用者は協調行動をとる事例を紹介している。このような経済的に非合理的な資源利用者の行動を、Dasgupta(1993)は、地域コミュニティの強権的な強制、資源利用者の均衡戦略、社会規範の内在化という3点から説明を試みており、Sethi and Somanathan(1996)は、社会規範の存在を数学モデルで示している。 資源管理における投入・産出分析から、サンクションやモニタリングによる審理と比較してコミュニケーションによる管理の効率性が明らかになった。また、資源利用の持続性分析により、モニタリングの重要性を明らかにした。
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