研究概要 |
平成8年度は,日本の民需向け環境装置の生産額をレビューし,国内での環境装置の総費用を推計した。次に,中国やアジア各国の環境対策に必要な環境コストの試算を試みた。 1970年から1995年までの日本国内の民需部門の各セクター向けの環境装置の生産額を累積総額は,8兆7,800億円となる。セクター別では電力セクターが最大で,2兆2200億円余,続いて,鉄鋼業が1兆2200億円強,石油石炭の1兆円弱となった。環境装置生産額を対策分野でみると,大気汚染対策に5兆4,200億円(61.7%),水質汚濁対策に2兆7,600億円(31.4%)と,大気汚染対策の占める比重が大きい。大気汚染対策では,電力セクターが34.9%の高いシェアを占めている。水質汚濁対策では,機械と食品のシェアが大きい。 民需で大きなシェアを占める電力セクターの大気汚染対策について,さらに内訳をみると,排煙脱硫装置が9,490億円と50,2%を占めている。続いて集塵装置が3,360億円(17.8%),排煙脱硝装置が,3,130億円(16.6%)となっている。1980年代以降の排煙脱硫装置及び排煙脱硝装置の生産額の伸びは,殆ど電力セクターによるものである。 次に,日本で広く用いいられている石こう副生の排煙脱硫装置を,同地域に設置した場合の装置のコストを試算した。総建設コストは1兆円弱となり中国のGNPの1.7%に相当する。また,減価償却費を加えた運転コストは,1,460億円となり,これをkWHあたりの単価にすると0.49円となる。同様の試算を他のアジア諸国の全火力発電所に当てはめると,いずれの場合でも各国のGDPの0.4%以上の建設コストが必要となる。また,中国について,水質汚濁対策に必要な環境装置の費用を試算したところ,総額は6兆7,100億円となりGNPの12%に相当する。
|