研究概要 |
平成9年度は,日本国内における企業の公害対策の実態を費用面から把握するため,環境装置の生産額,企業の公害防止投資及び各企業における公害防止施設に関するデータの解析を行った。その結果,以下が明らかになった。 環境装置の生産額は,民需全体では,大気汚染防止装置,水質汚濁防止装置,ごみ処理装置,騒音振動防止装置でそれぞれ,5,662,2,817,554,99十億円となり,総額約9兆円となる。公害防止対策が集中的に実施された1970年代では投資の中心は大企業の素材産業であり,脱硫対策を中心とする大気汚染対策に比重が大きかった。1980年代以降になると投資金額は全般的に少なくなるなかで,中小企業,組立産業,騒音振動対策の比重が大きくなった。公害防止投資額の総投資額に対する比率では,大企業が1.66%であるのに対し,中小企業では4.37%である。製造業における分野別では,大企業では大気汚染,水質汚濁,廃棄物,騒音振動であるのに対し,中小企業では,水質汚濁,大気汚染,騒音振動,廃棄物となり,特に騒音振動対策に中小企業が大きな投資をしている。公害防止機器の年間運転費用の平均は,中小企業で2800万円〜4600万円,大企業で5400万円〜8100万円となった。これと年間の売上との比は,大企業で0.1%未満であるのに対し中小企業では0.38〜1.71%と約5〜20倍の開きがあった。大企業では,製造業の省エネ投資の比率は6.61%であり,公害防止投資比率の4.08%より高い。とりわけ鉄鋼業では,省エネ投資比率は公害防止投資比率の3倍以上を占めている。 また,開発途上国が公害対策に必要な資金ニーズに応えるためのしくみの検討を行った。ここでは,アジアに向けたODA等の公的経済協力の実態を整理するとともに,民間ベースの環境国際協力の取り組みについて日タイの企業間の取り組みに関するケーススタディを行った。
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