研究概要 |
プレジャーボ-トの船体汚損防止として塗装され,その成分の海中への溶出がマリ-ナや狭湾内での海洋汚染を引き起こしている従来型毒性塗料に代わり,公害物質を全く含有しないシリコーン系防汚塗料(A社製)をFRP船体に適用するため,試験板浸漬実験やFRPボ-トの船走実験を行って,その可能性について検討した。以下に,これらの実験で得られた結果を要約する。 1.各種塗装システムのFRP試験板を対象に,高速回転実験及び高圧射水実験によるシリコーン塗膜の密着性調査,そして海中浸漬実験による塗膜の防汚調査の結果,(1)B社塩化ゴム外舷塗料を下塗りに採用したもの,(2)A社塩化ゴムAC塗料を下塗りに,B社塩化ゴム外舷塗料を中塗りに採用したものが,総合評価として最も優れていた。 2.B社塩化ゴム外舷塗料とA社塩化ゴムAC塗料の混合比率を替えた下塗り塗料が上塗りのシリコーン塗膜の防汚性能に及ぼす影響は認められなかった。 3.各種塗装システムのFRP試験板の塗膜面上の水滴の接触角と滑り角を測定し,塗膜の防汚指標であるはっ水性と滑性について比較調査した結果,いずれも下塗りにB社の塩化ゴム塗料を使用した塗装システムが他の塗装システムより優れていた。 4.塩化ゴム塗料に含有される可塑剤の影響を調査した結果,可塑剤が上塗りシリコーン塗膜の防汚性能及び塗膜のはっ水性,滑性に影響を及ぼすことが判明した。したがって,可塑剤が防汚性能向上の一要因と考えられる。しかし,第一成分である塩化ゴム樹脂による影響は認められなかった。 5.シリコーン塗膜の防汚性能は,塗膜面上の水滴の接触角よりも滑り角との関連が大きいことが判明した。又,着色水噴霧による塗膜面のはっ水模様の観察によって,実海水中での防汚性能の良否の予測が可能である。 6.モーターボ-ト,ヨット及び小型釣りボ-トの実稼働実験によって,無公害防汚塗装システムの防汚効果が検証され,その有効性が確認できた。 7.本塗装システムの防汚効果の持続期間はほぼ一年程度である。冬季において月1回,夏季においてはそれ以上の航走により,船体のより一層の清浄維持が期待できる。 今後の研究課題としては,シリコーン系塗料中に可塑剤を直接混入することにより防汚性能の向上が期待できるかどうか,またシリコーン塗膜の接触角と滑り角の経年変化と防汚効果との関連について検討の必要がある。
|