研究概要 |
キク科野菜であるゴボウやシュンギクに含まれる抗酸化物質カフェオイルキナ酸類(以下CQAと略)は、有機溶媒中でのリノール酸のラジカル酸化を強く抑制することがすでに明らかになっている。その抗酸化作用メカニズムの解明および生体内すなわち水溶液系での活性発現の可能性について検討を始め、以下の知見を得た。まず、ゴボウ中のCQAの動態を調べるため、より極性の高い画分を精査したところ、水可溶区よりアシル基にこれまでに例のないリンゴ酸を含むもの(1, 5-di-O-caffeoyl-3-O-malylquinic acid)を見出した。また、関連してCQAと同様のオルトジフェノール構造をもち、抗酸化性が期待できるアントシアン類の検索も行ない、リンドウ色素より7種のアシル化配糖体を見出した。次に、水溶液中の抗酸化性検定系の確立のため人工リポソームでの実験を行なった。卵黄レシチンをリン酸緩衝液中に懸濁し、バス型およびプローブ型装置によって超音波照射を行ない、リポソーム溶液を得た。この溶液に水系のラジカル開始剤としてAAPHを用いてラジカル酸化反応を起こさせ、経時的に過酸化脂質をロダン鉄法、マロンジアルデヒド等の二次分解物をTBA法で定量した。トコフェロールを用いたモデル実験で、良好な抗酸化性が認められた。しかし、バス型装置で調製したマルチラメラリポソームでは酸化速度が遅く、再現性のよいデータが得られにくいことがわかったため、後の実験はすべてプローブ型装置によるシングルラメラリポソーム溶液を用いることとした。予備的にゴボウの代表的なCQAである1, 5-di-O-caffeoyl-3-O-succinylquinic acidでの抗酸化試験を行い、抑制活性を検出した。さらにより直接的なTBHDによる脂質過酸化反応および、生体組織として赤血球膜脂質を用いた検定系の検討を行なっている。
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