ファルネシル二リン酸(FPP)合成酵素はジメチルアリル二リン酸(DMAPP)とイソペンテニル二リン酸(IPP)2分子から、ゲラニル二リン酸(GPP)を経てFPPを与える反応を触媒する。FPPはドリコール、ステロイド、ユビキノン、天然ゴム、プレニル化タンパク等前駆体として重要な化合物である。 報告者は中等度好熱性細菌Bacillus stearothermophilusより得られる熱耐性FPP合成酵素の生成物の鎖長を決める構造因子を検討すべく、本酵素のフォトラベル化剤の開発、およびフォトアフィニティー・ラベリングを試みた。 フォトラベル化剤として二つの型の化合物を合成し検討を行った。一つはアリルアジドを光感受性基として持つ基質アナログを合成した。この官能基を持つ生成物アナログの生化学的評価を行ったところ、競争阻害財として有効に働くことが分かった(Ki値10μM)。この物の共存下、光照射により酵素の失活が見られた。このアナログの1位の炭素につく水素をトリチウムに置き換えた同アナログを合成し、このアナログの共存下、酵素溶液の光照射を行い、タンパク分を集め、SDS-PAGE分析を行ったところ、本酵素に相当する画分に放射性のバンドが認められた。今後はさらに、放射化されたタンパクを用い、標識されたアミノ酸の特定を行う予定である。(秋季年会発表済、投稿準備中)。 次に、光感受性基としてベンゾフェノンを持つ基質アナログを合成した。このアナログを用いて、FPP酵素の他にヘキサプレニル二リン酸合成酵素、ウンデカプレニル二リン酸合成酵素についても検討した。各アナログおよび光照射の生化学的評価より、ベンゾフェノン-GPPアナログが、特に有効であることが分かった。アリルアジド基を持つアナログの時と同様に、放射性アナログを用いて大量スケールでの標識、アミノ酸の特定を試みているところである(一部の結果はBioorg.Med.Chem.Lettersに報告済)。
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