研究概要 |
宮崎県日南大島近海及び愛媛県佐田岬で採集した海綿のメタノール抽出物中に,イトマキヒトデの胚発生を胞胚期で停止させる活性が認められた。これらのメタノール抽出物から,活性物質として2-アミノアデノシン(1),2'-デオキシグアノシン(2)及びチミジン(3)を単離・同定した。これら活性物質(1)〜(3)は,イトマキヒトデ受精卵の発生を胞胚期で選択的に停止させ,その半数阻害濃度(IC_<50>)はそれぞれ2,3および5μg/mlであった。 2-アミノアデノシン(1)がイトマキヒトデ胚の発生を胞胚期で停止させる原因については,アデノシンに替ってDNAに取り込まれる正確なDNAの複製ができなくなったためと考えられた。また,2'デオキシグアノシン(2)およびチミジン(3)の場合は,最終産物によりフィードバック阻害がおこり,de novo合成の最初の段階である5-ホスホリポシルアミンの合成が抑えられ,胚の正常なヌクレオチドバランスを崩すことによって核酸合成が停止したため,胞胚期で発生が停止した可能性が考えられた。 一方,鹿児島県馬毛島で採集された海綿のメタノール抽出物中に,イトマキヒトデ胚の発生を胞胚期から原腸形成の段階で停止させる活性が認められたため,ヒトデ胚発生阻害活性を指標に,活性物質の分画・精製を行った。その結果,活性物質としてオンナミドA(4)を単離・同定した。オンナミド(4)は,2μg/ml以上の濃度でイトマキヒトデ胚の発生を胞胚期で停止させた。また1μg/mlでは,イトマキヒトデ受精卵の発生を,原腸陥入の段階で阻害した。1〜5μg/mlでは発生が同調せず,1〜64cellで停止した。分裂溝が正常に出来ないため,細胞質分裂が出来ないようであったが,核の複製は認められた。
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