放線菌から生産される抗寄生虫・抗昆虫活性を有するポリケチド化合物エバ-メクチンのアグリコン部分の生成はポリケチド合成酵素によって行われる。同生合成遺伝子群の解析の結果、エバ-メクチン-ポリケチド合成酵素はaveAIとaveAIIの2ケ所にコードされ、さらにそれらはI型ポリケチド合成酵素であることがが推察された。本研究ではエバ-メクチンアグリコン部分の生合成機構を明らかにすることを目的に、同アグリコン合成の初期段階の生合成遺伝子を含むaveAI領域の全塩基配列を決定し、その領域にコードされるポリケチド合成酵素を明らかにした。I型ポリケチド合成酵素はポリペプチド上に数種の機能ドメインが存在する多機能ポリペプチドであり、炭素鎖延長反応の回数分の縮合、およびそれに引き続くβ位炭素鎖修飾の機能ドメイン構造を有するため、極めて巨大なポリペプチドであり、その遺伝子領域も30kbpにもおよぶ。効率の良い塩基配列解析を行うため本研究では大腸菌のトランスポゾンを用いた方法を検討た。その結果、高GC含量を有する放線菌の遺伝子解析にも適用可能であることを見出した。aveAI領域の解析の結果、この領域には2つのORFが存在し、それぞれAveAI-PKS1(414kDa)とAveAI-PKS2(666kDa)のポリペプチドがコードされており、それぞれ2回、4回の炭素鎖伸長反応を触媒するものと思われる。さらにそれぞれのポリペプチド上の機能ドメインの配置はH_2N-AT-ACP-KS-AT-KR-ACP-KS-AT-DH-KR-ACP-COOHとH_2N-KS-AT-ACP-KS-AT-KR-ACP-KS-AT-KR-ACP-KS-AT-DH-KR-ACP-COOHであることが推定された。それぞれの機能ドメイン同士の保存性は非常に高いものの、ATドメインでは転移する基質によってそれぞれ相違が認められた。
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