研究概要 |
8-Oxo-2'-deoxyguanosine 5'-triphosphate(8-oxo-dGTP)の真核生物DNAポリメラーゼに対する変異原性について研究し、以下の結果を得た。 (1)8-oxo-dGTP存在下、非存在下で、ミトコンドリアDNA複製の中心酵素であるDNAポリメラーゼγのDNA合成における忠実度を、LacZα遺伝子をforward mutational targetとしたM13mp2 gapped DNAを用いて測定した。その結果、LacZα遺伝子変異体の出現頻度は反応液中の8-oxo-dGTP濃度の増加に伴い上昇した。8-oxo-dGTP非存在下(50μM4 dNTPs)での変異体出現頻度が179x10^<-4>であったのに対し、10μM 8-oxo-dGTP存在下では423x10^<-4>、20μMでは653x10^<-4>、50μMでは930x10^<-4>、100μMでは1,950x10^<-4>であった。以上の結果より、8-oxo-dGTPはDNAポリメラーゼγに対して強い変異原性を有していることが示された。 (2)8-oxo-dGTPのDNAポリメラーゼγに対する変異原性を他のポリメラーゼと比較するため、核DNA複製に関与すると考えられる3種のDNAポリメラーゼα、δ、εについて、8-oxo-dGTP存在下、非存在下でのDNA合成反応における忠実度を(1)と同様の方法を用いて測定した。その結果、全てのポリメラーゼにおいて、gap filling反応に伴うLacZα遺伝子変異体の出現頻度は、DNAポリメラーゼγの場合と同様に、反応液中の8-oxo-dGTP濃度の増加に伴い上昇した。このことより、8-oxo-dGTPは真核生物DNA複製におけるDNAポリメラーゼ全ての分子種に対して強い変異原性を有していることが示唆された。
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