研究概要 |
本研究はタンパク質の立体構造構築を研究する上で圧力を因子として取り入れ,タンパク質工学的に生産する変異タンパク質を中心にその立体構造構築過程を明らかにするとともに,立体構造構築に必須なアミノ酸残基を同定し,構造安定性への寄与を解析することを目的とする。 本年度の成果は,1)「ループ構造とタンパク質の再構築」系のモデルとしてバクテリオロドプシンを用い,そのαヘリックス部位がいかに立体構造構築に寄与するかを補酵素であるレチナ-ルとの結合を指標として解析した(Biochim.Biophys.Acta,1323:145-153(1997))。2)ウシ膵臓由来のリボヌクレアーゼAのフェニルアラニン残基に部位特異的変異を導入した改変タンパク質を大腸菌にて発現し,その「アミノ酸残基置換のおよぼす構造安定性・折りたため機構への寄与」の解析を行った(論文投稿準備中)。特に120番目のフェニルアラニンは活性中心残基であるヒスチジン19と119に直接影響を及ぼし,活性と立体構造の安定性の両方に寄与することを見つけた。フェニルアラニンは従来の化学修飾法を適用できない残基であり,今回新たにその重要性が確認できたことは今後の部位特異的変異導入に際する目標を掲げることができたと考える。 現在,リボヌクレアーゼAのカルボキシル末端領域がその折りたたみ機構に関与するという議論に焦点をあて研究をすすめている。平成9年度ではカルボキシペプチダーゼYの圧力変性と熱変性が立体構造構築に及ぼす効果の比較検討も行ってゆく。
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