本研究では、核内膜への膜蛋白質輸送経路の解明を念頭に置いて、どのような膜内在性蛋白質が核内膜に存在するかを、酵母において生化学的に解析するシステムの構築をめざした。これには、核膜の大量調製法の確立に加え、細胞分画中の核膜の状態をモニターするシステムの確立が必要である。本研究では、ます、核膜の内在性膜蛋白質であると予想されているSen2pおよび、核膜孔複合体の膜貫通サブユニットであるPoml52pを取り上げ、これらの特異抗体の作成と、これらとGFP(Green Fluorescent Portein)との融合タンパク質発現株の構築を行った。Sen2pは本来発現量が低く、かつ、分解の速いタンパク質で、この局在をGFPの蛍光で捉えるためには、融合タンパク質のかなりの過剰生産を必要とすることが明らかとなった。結果として、大量培養時に十分な発現を与えるプラスミドの構築には至らなかった。しかし、その解析中、Sen2pは可溶性核タンパク質に見られる典型的な核移行シグナルとは異なった、新規の核移行シグナルを持つ可能性が明らかとなった。 核の分画には、Blobelらの報告したFicollを用いる方法と、Kilmartinらの報告したsucrose・PVPを用いる方法があり、この二者を比較した。Ficollを用いた方法では、純度の高い核が回収されたものの回収率は低く、sucrose・PVP法では十分な純度が得られなかった。核膜に特異的に存在する膜タンパク質を同定するためには、純度・回収率共に満足のいく分画法を工夫する必要があり、現在、更なる検討を加えている。
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