本年度は、リボ核酸分解酵素に対し、阻害剤より気質に近い構造をもつ気質類似体と酵素の複合体結晶を作製することを試み、それに成功し、構造解析を行うことができた。気質類似体としては、デオキシのジヌクレオシドリン酸を使用した。具体的には、遺伝子組み替えの手法で得られた RNase RNAP-Rh(Native)の結晶をデオキシジヌクレオシドリン酸(dApG)5mMの溶液に浸すことによって、浸漬法により複合体結晶を作製した。この結晶を用いて、当研究室のX線回折計R-AXISIIcを用いてX線回折データを収集した。分解能は2.3Åである。すでに得ている Nativeの構造に基づいて、差フーリエ合成図より構造を解いた。ついで、結合距離・結合角等に束縛をかけた最小2乗法プログラムX-PLORを用いて構造の精密化を行った。最終R値は0.151となり、良好な解析であったことが分かった。d(ApG)のアデニン塩基部分は、これまでの研究からB1塩基結合サイトとして考えられてきたTrp49、Asp51、Tyr57付近に位置し、一方グアニン塩基部分はこれまで知られていなかったサイトであるG1n32、Asn94、Phe101近傍に位置していることが判明した。このサイトはB2サイトと呼ぶことができると思われる。また、触媒残基として考えられているHis109、His46のN^<ε2>原子とアデノシンのリボースの2'位のプロトンとの距離はそれぞれ6.2Åと4.1Åなっていることが判明した。
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