我々が立体構造を明らかにしているリボヌクレアーゼRhに、従来数多く使用されてきた阻害剤ではなく、基質により近い構造をもつ基質類似体を結合させた「複合体結晶」を作製し構造解析を行い、サブサイト(=基質の各部分が結合する部位)が酵素のどこに対応しているかを特定する研究を行ってきた。昨年度において構造解析に成功したデオキシのジヌクレオシドリン酸d(ApG)複合体に引き続き、本年度は、酵素としてRNase RNAP-Rhの部位特異的改変体を使用し、デオキシジヌクレオシドリン酸としてd(ApC)を使用し結晶化を試みた。d(ApC)(deoxyadenylyl(3′→5′)-2′-deoxycytidine)をRNase RNAP-Rhの部位特異的改変体Y57W結晶に浸漬法を用いて導入した。結晶は0.5×0.3×0.1mmのものを使用し、d(ApC)の濃度は5mMであった。単位格子はa=68.38、b=72.49、c=49.94Åとなり、Native結晶の格子定数からのずれは1%以下であり、同形を保っていることが確認できた。X線回折データは理学電機社製R-AXISIIcを用いて行った。この回折データに基づいて構造を解くことに成功し、次いで最小二乗法プログラムを用いて構造の精密化を行った。RNase RNAP-Rh(Y57W)とアデニン塩基との間には2本の水素結合、リン酸基との間には3本の水素結合、シトシン塩基との間には3本の水素結合が形成されていた。シトシン塩基は、Phe101とAsn94、Gln95の間にスタッキングすることが明らかとなった。この結果および昨年度のd(ApG)の結果から、これまで明らかにされていなかったサブサイト(B_2サイト)がGln32、Pro92、Ser93、Asn94、Gln95、Phe101の周囲に存在することが明らかになった。
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