研究概要 |
ゴルジ装置の特異的な構造、機能に係わる蛋白質とその働きについての解析は最近までほとんどおこなわれていなかった。最近ゴルジ装置細胞質側に存在する蛋白質の発見が次々と報告されている。我々はヒト自己抗体を用いて新しいゴルジ装置細胞質側局在蛋白質、GCP372,GCP230,GCP170,GCP112及びGCP372のホモログであるラットGCP360の存在を明らかにした。これらは全てゴルジ装置に局在しているが、膜蛋白質であるGCP372(GCP360)以外はペリフェラルな膜結合様式をとっている。GCP230以外はcDNAにより一次構造が明らかになっているが、全て巨大なcoiled-coi構造を持っていた。 GCP170はBFAに高い感受性を示す分子量170kDaの蛋白質であるが、既知のBFA感受性蛋白質とは異なっていた。GCP170は400アミノ酸からなる球状のhead domain,それに続く2つのcoiled-coil domainそして約130アミノ酸からなるtail domainの4domainから成っている高りん酸化蛋白質である。GCP170のアミノ酸配列には多くのりん酸化のコンセンサス配列が見いだされるが、実際のりん酸化部位を同定するため各domainを欠失させたコンストラクトを発現ベクターに組み込みCOS-1細胞で発現りん酸の取り込みを免疫沈降、SDS-PAGEで解析した。head domainを含むコンストラクトは全てりん酸化がみられた。一方head domainを含まないコンストラクトはりん酸化されなかった。GCP170のりん酸化はhead domainにおこることが示された。前述のコンストラクトを同様にCOS-1細胞で発現ゴルジ装置を単離して各蛋白質のゴルジ装置局在能を蛍光抗体法を用いて検討した。head domainを欠いたコンストラクトはゴルジ装置局在がみとめられず。またhead domainとcoiled-coil domain両者がゴルジ装置への局在に必要であった。これらの結果から高りん酸化部位であるhead domainがGCP170のゴルジ装置局在に重要な役割をはたしていることが推測される。 最近巨大なcoiled-coil domainを持つゴルジ装置局在蛋白質golgin245/p230のcDNAが単離され、一次構造が報告された。我々が解析しているGCP230と分子量がほぼ同じであるので、本蛋白質がgolgin245/p230と同一か否かを検討するために以下の実験をおこなった。golgin245/p230のアミノ酸配列を用いて大腸菌で発現をおこない、golgin245/p230に対するポリクローナル抗体を作製した。この抗体は我々が単離した部分的GCP230cDNAと反応せず、さらに抗GCP230抗体はgolgin245/p230と反応せず、抗golgin245/p230抗体はGCP230と反応しなかった。この結果からGCP230は未知のゴルジ装置局在蛋白質あることが確認された。現在GCP230一次構造の解析を継続している。
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