本研究では真核細胞の小胞体膜蛋白質の典型としてチトクロームP450(以下P450)をとりあげ、小胞体膜蛋白質の小胞体膜局在化機構ならびに細胞内動態について、以下のことを明らかにした。 1、P450と、同じ膜内トポロジーと同様の分子量をもちながら細胞内局在が異なるsynaptotagmin2(以下Stg2)との組換え体を用いて小胞体残留に必要な配列特性を調べた。先ず、培養細胞系で発現させたStg2分子は、小胞体型のNリンク糖鎖付加を受け、その後その糖鎖の複合型への変換とOーリンク型糖鎖付加という2種の異なる修飾を受け、細胞膜表層まで到達することを明らかにした。このことから、今後Stg2変異分子の細胞内局在が、これら複数の修飾を指標として追跡できると考えられた。ついで、P450の膜結合に関与するアミノ末端の疎水性セグメントをStg2の膜貫通セグメントに導入しても、小胞体局在の挙動を示さないことを明らかにした。これは、P450の膜貫通セグメントが小胞体局在に十分であるとの報告には再考が必要なことを示している。さらに、Stg2の疎水セグメントがP450よりも長いことに着目し、膜貫通セグメントのアミノ酸残基数と局在との関わりを調べた。その結果、27アミノ酸残基からなる、Stg2の疎水性セグメントから3-4残基欠損させるだけで、小胞体局在型に変換されることが判明した。 2、小胞体残留型の変異にStg2は発現が高いが、分解も非常に早く60分以内で半減することが明らかになった。現在、この変異Stg2分子の小胞体膜上での分解系の解析を進めている。
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