すでに、ブタ細胞質局在アスパラギン酸アミノ基転移酵素(cAspAT)の野性型酵素の大腸菌での発現系を、cAspATに対応するcDNAをtac promotor支配下におくことで実現していること、変異酵素の作成、機能解析に関しても十分な経験があること、また、物理化学的測定に関する豊富な経験から、以下のの計画に従って研究を進めた。 1.Phe228を空間充填率の小さいAlaや逆に大きなTyrやTrpに置換した変異酵素を作成した。 2.異変酵素の構造安定性を、熱安定性、pH安定性、タンパク質分解酵素に対する抵抗性などから検討した結果、野生型酵素と比べて大きな変化は観察されず、変異の構造への影響は局所にとどまっていると判断された。 3.変異酵素の各種気質に対する動力学的性質を野生型酵素のそれと比較した。 4.変異酵素の吸収およびCDスペクトルを解析し、酵素構造や補酵素の存在状態に関する情報を得た。 5.Phe228を含むループ部分に構造可塑性を提供していると考えられる、Gly227とGly231に変異を導入し、上記と同様の検討を加えるための変異酵素の作成を開始した。 6.分光学的レポータグループとなるHis残基を二重変異としてPhe18に導入し、小ドメインの"Induced fit"による構造転移現象に対するPhe228変異の影響を、His18のNMRシグナルの変化から観察するための予備実験を開始し、His18に 由来するシグナルを同定した。
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