研究概要 |
基質特異性や触媒活性は、基質と相互作用する残基や官能基だけではなく、それらを補助するアミノ酸側鎖や、活性域空間の大きさによっても調節されている。大小2つのドメイン間にあり、"Induced fit"により基質結合後に形成される活性域空間の大きさを、ドメイン間接触部分のアミノ酸残基置換によって、活性域を構成するアミノ酸側鎖を保存したまま変更することが可能となると考えられたので、まず、小ドメインのMet326,Ile330,Met359側鎖と近接する、大ドメインGly227-Phe228-Ala229部分を改変した酵素を作成し、構造安定性、反応速度や基質結合能の検討を行なった。 1.変異酵素の構造安定性を、熱安定性、pH安定性などから検討した結果、野生型酵素と較べて大きな変化は観察されず、導入した変異による構造への影響は局所にとどまっていると判断された。 2.吸収およびCDスペクトルの観察から、変異酵素の補酵素の存在状態は野生型酵素のそれとpKa値以外では大きな差異はないと考えられたが、基質結合時における補酵素状態の詳細な解析が次の目標として重要であると判断された。 変異酵素の各種基質に対する動力学的性質を野生型酵素のそれと比較した。 本酵素において"Induced fit"の後に形成される活性域クレフトの広さと基質結合能との関係を明らかにすることを目的として、アミノ基を^<15>Nでラベルした基質類似体を作成し、NMRにより基質類似体のシグナルを観察した。 本酵素の基質-酵素複合中間体モデルを形成する基質類似体2-methyl-aspartateとPLPとのシッフ塩基モデル作成し、水溶液中での存在状態を観察した。イミノ基窒素のシグナルは15ppm近傍に観察され、PLPの3′OHと強い水素結合を形成していること、C4-C4′結合はシス構造であることが推定された。
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