我々は、抗血栓薬ワルファリン投与時に生合成されたビタミンK (VK)依存性タンパク質プロテインC (PC)は、分泌されず細胞内で特異的に分解されることを示したが、これは薬物誘導による小胞体内分解の唯一の例である。今回、PC発現BHK細胞を用い、小胞体内分解に関与するタンパク質群、特に異常蛋白質認識に関与する細胞内シャペロンと分解を司るプロテアーゼを調べた。その結果、1. DSP架橋により、それぞれGRP94、BiPと見られる100、80kDa蛋白に加え、60kDaのエンドH非感受性蛋白が検出され、これがカルレティキュリンであることを同定した。2.連続免疫沈降法によりカルレティキュリンは、ワルファリン下のPCとのみ一過性の強い会合が見れたが、カルネキシンは、VK下とワルファリン下、いずれのPCとも会合した。3.トリトンX-100抽出液で調べたところ、ワルファリン下ではBiPと見られる80kDa蛋白に加え、43と40kDa蛋白(各々p43、p40と略)が一過性に会合した。なお、p43はp40の糖付加型と見られる。4.各種プロテアーゼ阻害剤の影響を調べたところ、プロテアソームの合成阻害剤であるZ-Leu-Leu-Leu-H、、Z-Leu-Leu-Nva-H、、ラクタシスチンによって、ワルファリン下PCの強い分解阻害が見られた。以上の結果はワルファリン下PCは、小胞体の品質管理機構により分解されるが、この過程でHSP系シャペロン(GR94、GRP78)、Ca2+-依存性シャペロン(カルレティキュリン、カルネキシン)の他に、p43とp40が会合する。これらのうち、カルレティキュリン、p43とp40はワルファリン下のPCに強く会合する。また、分解を司るプロテアーゼとしてはプロテアソームが有力であり、分泌タンパクであるPCが小胞体から細胞質内に輸送された後、分解される可能性が示唆された。
|