高等動物の副腎皮質は、未分化な副腎原基細胞から発生・分化し、外側から球状層、束状層、網状層と呼ばれる3種類の細胞層から構成される組織となる。この3層の機能的に異なり、球状層がミネラルコルチコイドを、束・網状層がグルココルチコイドを特異的に分泌する。本研究の目的は、細胞工学的、および、発生工学的方法を用いて、副腎皮質を構成する細胞の、層構築を含めた最終分化に関与する因子とその機能を明らかにすることである。 細胞層特異的に外来遺伝子を発現させるには、特異的なプロモーター(ターゲティングプロモーター)が必要である。まず、グルココルチコイド産生細胞層選択的に外来遺伝子を発現させるためのターゲティングプロモーターの同定を行った。グルココルチコイド産生細胞である束・網状層細胞に最も特徴的に発現する遺伝子は、CYP11B1である。本研究の代表者らはすでにこの遺伝子の調節領域を含むクローンを得ている。これと、束・網状層細胞と性質の似たY-1細胞に加え、種々の組織由来の株細胞を用いてトランスフェクトし、ターゲティングプロモーターの同定を行った。その結果、CYP11B1の上流1.2kbのDNAが、副腎皮質の束・網状層に特異的なプロモーターとして機能することが強く示唆された。 ミネラルコルチコイド産生細胞のためのターゲティングプロモーターを同定するにあたっては、球状層の細胞の性質を保持した細胞株はこれまで知られていない。そのため、ラット副腎から球状層細胞の調製を行った。副腎皮質の皮膜に接した部分から細胞を分散させ、ショ糖密度勾配遠心法により、細胞を分画した。これらからRNAを抽出し、逆転写酵素反応後PCR法を用いて、CYP11B2を発現している細胞を同定し、単離することに成功した。この細胞を用いて、球状層に特徴的な遺伝子であるCYP11B2遺伝子上流からターゲティングプロモーター領域の同定をすることが可能になり、その実験を継続している。
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