研究概要 |
我々が体系的なスクリーニングによって分離したPeg3,Peg5(paternally expressed gene)は、脳で特異的に発現するインプリンティング遺伝子である。Peg3は新規の遺伝子で、分子量180kの巨大なzinc finger proteinをコードしており、非常に特殊なC2H2 typeのzinc finger motifが11個含まれていることから、特殊な役割をもつDNA結合蛋白質として機能していることが予想される。一方、Peg5は近年発見された、脳に特異的に発現するNeuronatin遺伝子と同一のものであった。この遺伝子は発生初期にはrhombonmere3,5のみで発現が開始し、しだいに脳を含んだ中枢神経系全体で発現が見られるようになる。また、出生直後は小脳で顕著に発現している。Peg5/Neuronatinは膜結合型の短いポリペプチドをコードしており、C末端側にはプロテインキナーゼCによるリン酸化部位を複数有している。構造的にはH^+-ATPase,Ca^+-ATPaseを構成しているサブユニット蛋白質の一つと高い相同性を有していることから、神経機能に重要な役割を果たしていると考えられる。申請者は、これらの蛋白質の神経系における機能を解析する目的で、mRNAのin situ hybridizationによる解析とあわせて、抗体を用いた蛋白質の発現も調べた。Peg3については遺伝子の一部を発現ベクターに組み込んだ組換え蛋白質を抗原に用い、Peg5については合成ペプチドを抗原として、ラットを免疫して抗体を作製した。これまでの抗体染色の結果から、Peg3は成体期のすべてのニューロン細胞と一部のグリア細胞の細胞核を特異的に染色することを明らかにし、この蛋白質が神経系でDNA結合蛋白質として機能していることを示唆する結果を得た。
|