8-oxo-dGTPaseは、活性酸素によってdGTPから生成する変異原性ヌクレオチド8-oxo-dGTPを8-oxo-dGMPに分解し、ヌクレオチドプールから8-oxo-dGTPを取り除くことによって、DNA複製時、AT→CG突然変異を起こすA:8-oxo-G不適塩基対形成を防ぐ働きをしている。本研究では、大腸菌の8-oxo-dGTPaseのX線結晶構造解析を行ない、8-oxo-dGTPの認識機構、リン酸ジエステル結合切断機構を3次元構造レベルで解明することを目的とし研究し、以下の研究成果を得た。 <大腸菌8-oxo-dGTPase> (1)X線構造解析可能な結晶を得る条件を確立し、天然型結晶の2.2A分解能のX線回折データを得た。最近、MNR法によって本酵素の3次元構造が報告されたのでその構造を元に分子置換法で解析を試みたが成功せず、溶液構造とは幾つかの領域で構造が異なると結論した。そこで初期の計画通り重原子同型置換法を用いて解析するため、8-oxo-dGTPaseの大量発現ベクターを組み込んだ大腸菌を大量培養、8-oxo-dGTPaseを大量生産させ、高純度で精製し、良好な結晶を調整した。 (2)有効な重原子同型結晶として白金誘導体を見いだし、その回折データを高エネルギー加速器研究機構の放射光を用いて収集した。単一同型置換法を用いて解析し、分子の境界領域が鮮明な電子密度図を得た。現在、3次元構造モデルを構築を試みている。 <哺乳動物8-oxo-dGTPase> (1)現在得ているマウスの結晶は極めて小さいこと並びに活性のある蛋白質試料が得られにくいので、蛋白質試料が大量に得られるヒト8-oxo-dGTPaseを対象とした。ヒト8-oxo-dGTPaseの大量発現ベクターを組み込んだ大腸菌を大量培養、8-oxo-dGTPaseを大量生産させ、高純度で精製した。精製試料を用いて、Sparse Matrix法で結晶化条件のスクリーニングを行い、PEG8000を沈殿剤をする条件から針状結晶を得た。現在、X線構造解析可能な大きさの結晶を得るべく結晶化条件の最適化を行なっている。
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