研究概要 |
(1)通常PC12細胞およびシナプトタグミン欠失PC12細胞を大量培養し、(本年度購入した)電気化学検出器を備えたHPLCを使用して、外部刺激により放出されたカテコールアミンの精密定量分析を行った。アドレナリンおよびドパ-ミンの量で比較すると通常PC12細胞の場合がシナプトタグミン欠失細胞の場合をかなり上回っていた。これはカテコールアミンの放出の過程にシナプトタグミンが関与しているという従来の結論を支持する結果となった。 (2)リン脂質phosphatidyl serine(PS),phosphatidyl ethanolamine(PE),phosphatidyl choline(PC)およびphosphatidyl inositol(PI)のうちの2種類を含む巨大リポソームをphase evaporation法により合成した。牛の副腎髄質のクロマフィン細胞より単離精製した分泌顆粒と巨大リポソームの間の融合量をoctadecyl rhodamin B(R18)の蛍光dequenching量を蛍光分光光度計で測定することにより解析した。リン脂質PSを含むリポソームであれば一方のリン脂質が何であっても融合を示し、PSが本質的であることが判明した。またトリプシン等のタンパク質分解酵素で顆粒膜上のタンパク質を分解すると融合量が減少を示すことより、顆粒膜上のタンパク質が関与することも確認出来た。 (3)巨大リポソームと分泌顆粒の融合は蛍光顕微鏡下でR18の蛍光を高感度冷却CCDカメラで受光し、更に画像処理を行うことにより可視化し、蛍光dequenching量の変化を画像の輝度変化に変換することにより解析を行い、形態的にも融合を確認することが出来た。 (4)シナプトタグミン分子のCaセンサーとしての作用の解析を行うため、PSを含むリポソームとの融合量の変化をμMからmMの領域のCaイオン存在下で測定した。その結果Caイオンに対する感受性よりリン脂質PSの効果のほうが強いことが判明した。このことはシナプトタグミンではなくリン脂質によりCa依存性が制御されていることを示している。
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