内向き整流性Kチャネルは構造的に電位依存性Kチャネルのサブセットである。6回膜貫通型(電位依存性)Kチャネルの後半の2回の膜貫通部位とそれに挟まれたH5領域からなる。K選択性特異配列が電位依存性チャネルと共通であるだけでなく、イオン透過路に相当する一次構造は両Kチャネル族に共通する部分が多い。ところがH5領域内の荷電残基の分布は著しい差を示す。内向き整流性Kチャネルは陽イオンチャネルでありながらポア開口部近傍に正電荷が存在し、それが全ての内向き整流性Kチャネル族で保存されている。この148番目のアルギニン残基をヒスチジン残基に置換した。変異型チャネルを対象に卵母細胞発現系で電気生理学的実験を行った。変異型単独ではチャネル活性を消失した。野生型チャネルとの共発現によってヘテロオリゴマーチャネルが出現した。これらのヘテロオリゴマーチャネルは細胞外二価カチオン(マグネシウム、カルシウム)による感受性が高くなった。野生型チャネルは細胞外のpHに対して感受性が低く、pKaは4.6であった。一方変異型のpKaは7.1とヒスチジン残基のpKaに一致する値が得られた。さらに細胞外からのマグネシムによるブロックが、野生型ではpHに依存しないのに、変異型ではpH依存性を持つに至った。pHが8では感受性が高くなり、pHが6で野生型との差がなくなった。Mg^<2+>感受性のpH依存性から求めたpKaは7.2であった。これらの実験事実はヒスチジン残基がプロトン化することが単一チャネルコンダクタンスやMg^<2+>ブロックに重要な役割を果たしていることを示している。そこで変異型の単一チャネル電流を詳細に検討した。その結果、変異型チャネルには野生型チャネルには認められないサブコンダクタンス状態が見出された。このサブ状態の分子機構については今後検討したい。
|