研究概要 |
タバコの光化学系1核遺伝子psaDbの5′非翻訳領域中で見つかった全長23塩基対の翻訳エンハンサー配列(Db-type translational enhancer, DbTE)について、その作用機構をin vitro翻訳系をつかって検討した。 GUSレポーター遺伝子の5′非翻訳領域にDbTEを挿入したキメラ遺伝子を作成し、T7プロモーターを使ってこの遺伝子に由来するキメラmRNAを調製した。その際、(1)DbTEの有無、(2)5′capの有無、(3)3′poly(A)鎖の有無、とmRNAの翻訳効率との関係を比較するため、それらの要素を組み合わせた都合、8種類のmRNAを調製した。次いでこれらのmRNAを小麦胚芽由来のin vitro翻訳系に加え、各々のmRNAの相対翻訳効率を求めたところ、(1)DbTEは小麦胚芽由来のin vitro翻訳系でも翻訳エンハンサーとして機能するが、(2)このエンハンサー機能には5′capや3′poly(A)鎖の有無は影響を与えず、また、(3)DbTE配列、5′cap構造、3′poly(A)鎖、はそれぞれ単独でもmRNAの翻訳効率を上昇させるが、それらをどのように組み合わせても、生じる効果は個々の効果の単純な積算となる、という諸点が明らかとなった。これらの知見は、DbTEの作用機構が「mRNAの上でIRES (internal ribosome entry site)としてはたらき、5′capを経由しない翻訳開始反応を誘導している」といるモデルでも、「5′cap構造と3′poly(A)鎖との間の相互作用を触媒し、両者の働きに依存した翻訳開始反応を促進している」というモデルでも、ともにうまく説明できないことを示している。
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