我々は以前、ファシンとドレブリンが発生初期に多量に発現することを見いだし、成長円錐においては、フィロポディアのアクチン線維はファシンによって束ねられていて、ドレブリンは基部でこの束をほどく作用によりフィロポディアの消失に関与しているという可能性を示した。成長円錐における運動性にミオシンが必須であることは既に知られている。そこで今回、成長円錐の運動性にこの2つの蛋白質がどう関わっているかをさぐるため、アクチンミオシン相互作用に及ぼす両蛋白質の影響を解析した。新生ラット脳から精製したファシンは骨格筋ミオシンのMg-ATPase活性を40%上昇させた。ラット脳からの精製では必要量のファシンを得るのが難しいため、ファシン遺伝子を大腸菌で発現させた発現蛋白質を用いて以後の解析を行った。発現ファシンはアクチン結合能が正常で、骨格筋ミオシン、平滑筋ミオシンのMg-ATPase活性を40-60%上昇させた。一方ラット胎仔脳から精製したドレブリンは平滑筋ミオシン上のアクチンの滑り速度を0.34μm/sから0.10μm/sに減少させ、平滑筋ミオシンのMg-ATPase活性を40%阻害した。以上の結果から、ファシンとドレブリンは成長円錐のアクチンの構造制御のみならず、アクチンミオシン相互作用の調節を通して成長円錐の動きにも関与している可能性が示唆される。
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