研究概要 |
骨格筋細胞の最終分化にともなう細胞融合は,細胞膜上に存在する融合ペプチドをもつ蛋白質により引き起こされ,この蛋白質から生じた細胞内シグナル伝達が細胞融合またはそれにともなう現象を調節していると考えられる.本研究では,骨格筋細胞同士の細胞融合を引き起こす融合ペプチドをもつ蛋白質を同定する目的で得たMuf1,および細胞融合のシグナル伝達経路を構成する蛋白質を同定することを目的として得た低分子量G蛋白質M-RasとRhoMの発現様式,細胞内局在,ならびに機能を調べた. Muf1は骨格筋の未分化筋芽細胞に高く発現しており,血清刺激やSV40 large T抗原による刺激で誘導された.N末端にMyc-tagを付加したMuf1の局在をエピトープタギングにより調べたところ,細胞膜上ではなく小胞体様の構造に局在していた.これはN末端側のシグナルがMyc-tagによりふさがれたことにより生じた可能性が考えられるので,C末端にMyc-tagを付加したMuf1の局在を現在調べている.融合ペプチドに相当する領域に対するペプチド抗体を作製したので,今後これを用いてMuf1の局在と機能を解析する. 一方,低分子量G蛋白質のM-Rasは脳に,RhoMは骨格筋培養細胞に高い発現がみられた.いずれの蛋白質もGTP結合能とGTPase活性をもっていた.いずれも偽足突起などの細胞膜上に局在していることが,HAエピトープタギングにより示された.M-Rasの組換え蛋白質を線維芽細胞にマイクロインジェクトしたところ,アクチン線維を含む微小突起の形成がみられた.マイクロインジェクトしたRhoMはストレスファイバーの消失を引き起こした.現在,活性型とドミナントネガティブ型を骨格筋細胞にトランスフトすることにより,筋細胞融合における役割を調べている.
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