核蛋白質の核内への移行は、核局在化シグナルに依存した細胞質から核膜孔までの第一のステップと、エネルギーを利用して核膜孔を通過する第二のステップに大きくわけられる。本研究者らは、輸送の第一のステップにおいて、核蛋白質は細胞質で安定な複合体を形成して、はじめて核膜孔にターゲットすることを明らかににし、この複合体のことを「核膜孔ターゲティング複合体(nuclear pore-targeting complex:PTAC)」と名付けた。この複合体を構成する因子のうち、58kDa(PTAC58)と97kDa(PTAC97)の因子が活性に必須であることが明らかとなり、遺伝子クローニングにも成功した。大腸菌で発現させたこれら因子のリコンビナント蛋白質を用いた解析から、PTAC58は、NLSを特異的に認識する受溶体として機能し、PTAC97は)TAC58と核膜孔複合体(NPC)構成因子の両方に結合することによって3者の複合体を核膜孔にまでターゲットする活性を有することがわかった。NLS受容体として機能するPTAC58は大きな分子ファミリーを形成し、同一細胞内にそれぞれが50%程度の相同性をもつホモログが少なくとも3種類あることがわかってきた。また、PTAC97は輸送の第二のステップを担う低分子量G蛋白質の1つであるRanと結合し、Ranの機能とも密接な関連をもつことが明らかになってきた。
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