研究概要 |
細胞周期M期進行に伴い、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)が活性化され、染色体の凝縮、分離、分配が起こる。M期サイクリンはCDKの調節サブユニットとして細胞周期のM期進行を制御する蛋白質因子である。本研究では、M期サイクリンの生理機能をサイクリンの機能ドメインと関連づけて解析することを目的とした。 脊椎動物のM期サイクリンを出芽酵母の発現ベクターにつないで酵母細胞で発現させて、サイクリン-CDK複合体の活性レベルを変動させることで生育阻止を引き起こし、細胞周期進行に与える影響を細胞レベルと分子レベルで解析した。サイクリンAを酵母染色体に組み込んでで発現させると酵母の細胞周期が停止し、母娘両細胞に均等に分配されるはずの染色体が、娘細胞に引っ張りこまれた。この現象は発現させたサイクリン-Cdc28の複合体に依存したキナーゼ活性により誘導された。出芽酵母の内在性サイクリンの発現により誘導される染色体挙動を調べた結果、M期サイクリンClb3の過剰発現により娘細胞への核移動と核分裂阻害を引き起こすが、GlサイクリンやClb2では起こらないことがわかった。複製した紡錘体極と紡錘体が核の位置に対応して娘細胞側に局在し、伸張した後期紡錘体はみられなかった。Clb3依存性キナーゼがサイクリンAと同様に、スピンドル機能を介してM期での核の挙動に関与することが示唆される。 また、細胞周期停止を抑圧する出芽酵母サプレッサー変異の分離や酵母2-ハイブリッド法により、サイクリンと相互作用する結合因子を同定とその解析を行った結果、CDC28の新規の変異、DEAD1,YDJ1、ユビキチン類似配列を示す新規遺伝子が分離同定された。 これら因子の機能解析を通して、サイクリン依存性キナーゼ活性が、スピンドル機能とどのように関連しているかを分子レベルで明らかにすることが、今後の課題である。
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