研究概要 |
[目的] 白血病細胞では、分化誘導抑制因子nm23が過剰発現している。本年度は、急性骨髄性白血病患者より得られた新鮮白血病細胞におけるnm23遺伝子の発現量をRT-PCR法で定量し、臨床成績との関連性を解析し、白血病における臨床的意義を明らかにする。また、機能分子であるnm23蛋白質の検出系を作製し、蛋白質発現や細胞内局在と細胞の分化増殖との関連を解析することを目的とした。 [成果] 1.急性骨髄性白血病患者( AML、 110症例 )では、正常骨髄単核細胞に比べてnm23-H1,nm23-H2はともに高い発現を示した。nm23の発現と臨床成績との関連を解析した結果、nm23-H1の高発現は寛解導入療法の反応性と負の相関を示した。白血病患者の治療感受性の予測への期待ができる。 2.AML全症例においてnm23-H1の高発現群では有意な生存率の低下が認められた。nm23-H1の過剰発現は、AMLにおける新しい予後因子となることを確立した。 3.nm23抗体を用いた3つの蛋白質検出法で、白血病細胞におけるnm23蛋白質の過剰発現を確認した。また、調べたすべての白血病株細胞の細胞表面にはnm23-H1蛋白質が発現していた。nm23-H2蛋白質は赤芽球性白血病株細胞の細胞表面にのみ発現していた。この発現は白血病細胞を分化誘導すると減少した。正常骨髄および末梢血単核細胞の細胞表面には全く検出されないことから、細胞表面におけるnm23-H1蛋白質の発現は、白血病細胞に特異的であることが判った。 4.nm23蛋白質の細胞内局在は、主に細胞質の核周辺であった。白血病細胞を分化誘導すると核周辺から細胞膜方向への局在の変化が認められた。nm23蛋白質の細胞内局在と機能との関連が示唆された。
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