加藤誠志博士(相模中研)より分与されたヒトHdj2のcDNAを元にして、PCR法により一部改変したcDNAをpET-3aベクターに組み込み、発現系を構築した。これを大腸菌BL21(DE3)に導入した後、IPTGによりタンパク質の発現を誘導した。大腸菌粗抽出液をDE-52、ハイドロキシアパタイト、キレ-ティングセファロース、セファクリルS-300HR、さらに再度ハイドロキシアパタイトにかけて、Hdj2タンパク質を精製した。ウシ脳粗抽出液から精製したHsc70のATPase活性を、[α-^<32>P]ATPを用いて測定した。ポリエチレンイミン・セルロース薄層プレート上に展開し、生成したADPを定量した。Hsc70単独ではATPの加水分解はあまり進まなかったが、Hdj2を加えることにより約10倍に増大した。その促進効果は、大腸菌で発現させ、精製したヒトHsp40と同等であった。ロダネ-ゼを6Mグアニジン塩酸で変性させた後、希釈により変性剤を除くとロダネ-ゼはアグリゲーションを引き起こし、濁度上昇が観察される。希釈液中にHsp40を入れてもロダネ-ゼのアグリゲーションは押さえられなかったが、Hdj2を加えると顕著に抑制した。このことはHdj2の方がHsp40よりも基質結合能が高いことを示しており、その原因として、Hsp40にはないZn-フィンガー領域がHdj2に存在することが考えられる。すなわち、Zn-フィンガー領域が基質結合能に関わっていることが大腸菌のホモログであるDnaJにおいて証明されているからである。ホタル・ルシフェラーゼを高温で処理すると熱変性して、失活してしまう。しかし、熱処理の際にHsc70とHsp40が共存していると、フォールディング可能な状態に保持され、微量のウサギ網状赤血球ライセ-トの添加により、リフォールディングして活性の回復が観察される。同じ効果がHsc70とHdj2でも証明され、このリフォールディング反応においては、Hsp40とHdj2では変わりがないことが分かった。
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