研究概要 |
ゾウリムシParamecium caudatumの細胞内には大核と小核があり、有性生殖時に小核由来の受精核から新大核と小核がつくられ、旧大核は消失する。したがって生殖系列は小核によって維持される。本研究では小核の分化決定と維持される機構について研究し、以下の研究成果があった。 1) 生殖系列維持のための小核の機能;減数分裂後の4小核の内、3核は退化し、残った1核が分裂して、配偶核を形成の後に受精核を形成する。この配偶核の存在は、接合後の正常な口部形成に不可欠である。零染色体細胞を解析した結果、この小核の機能は、小核上の特定遺伝子によるものないことが明かになった。小核の機能は遺伝子によるものではなく、形態形成におけるオーガナイザー的機能をもつという考え方から、FITC-抗チューブリン抗体により蛍光観察を行い、配偶核形成から受精核形成過程の微小管の動向を解析した。その結果、核の行動に微小管が関与していることが明らかになった。 2) 減数分裂後の小核退化とWGAの微量注射による阻害;減数分裂後の3小核の退化過程を電顕により明かにした。この小核退化時期にレクチンWGA(1mg/ml,ca.35pl)を微量注射すると著しい退化阻害が起こった。金コロイド結合WGAを注射したところ、WGAは核膜ではなく、細胞質のライソゾームあるいはオートファジックバキュオールに結合していた。このことから、レクチンは核退化系に直接作用していると考えられる。 3) 核分化決定時の小核分化の決定機構;接合を完了した細胞内には4個の仮小核がある。興味深いことに、4個の仮小核はどれも消えず、接合後3細胞周期まで残る。ただし、接合後の細胞分裂時に、分裂できる小核は1個のみであるという驚く結果が得られた。
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