動物の発生過程におけるRasシグナルの機能と制御機構の解明を目的として、ArgosとRalというショウジョウバエの二つの蛋白質について解析した。EGF受容体の活性化を阻害する分泌性蛋白質Argosの過剰発現が細胞死を誘導する事を見出し、Ras/ERK経路がカスパーゼを介した細胞死を負に制御する事を明らかにした。Argosの作用に関連した未知の遺伝子の同定を目的として、Argos過剰発現によって生じる表現型を修飾する変異を遺伝学的手法により同定した。培養細胞においてリガンド非依存的に二量体を形成する変異型EGF受参体によるERKの活性化がArgosにより阻害されることを見出し、EGF受容体とは別にArgosの受容体が存在する可能性を示した。Rasの下流で機能するGTP結合蛋白質Ralのショウジョウバエ相同分子を同定・解析し、RasからRalへのシグナル伝達経路が細胞骨格の制御に関与する可能性を示した。
|