(1)腺胃の上皮の増殖を促進する新規の成長因子の検索:腺胃間充織が肝細胞増殖因子(HGF)と角化細胞成長因子(KGF)を発現すること、腺胃上皮細胞がこれらに反応して増殖することは既に報告したが、それ以外にも多様な成長因子が腺胃の上皮・間充織相互作用に関与していると考えられる。HGFおよびKGF以外の成長因子が腺胃上皮の増殖を促進するかどうかを調べた。その結果、線維芽細胞成長因子-1(FGF-1;またはaFGF)及びFGF-9が腺胃上皮の増殖を促進することが明らかになった。これらの因子は間充織から産生・分泌され、上皮・間充織間の細胞外基質に蓄積され、細胞環境の変化に応じて活性化され、上皮の増殖を促進するという機構で上皮・間充織相互作用に関与しているものと考えられる。これ以外の因子についても検索中である。 (2)腺胃間充織で特異的に発現されている成長因子の作用の検討:最近、骨細胞形成因子(BMP)が腺胃間充織で特異的に発現されていることが報告され、BMPが腺胃上皮の分化調節因子であるとの可能性が指摘された。現在、北海道大学薬学部との共同研究により、腺胃上皮の増殖・分化に及ぼすBMPの作用について研究中である。これまでの予備的な研究の結果、BMPは腺胃上皮の増殖を抑制することが示された。これは、腺胃上皮にペプシノゲン発現が誘導される際に上皮の増殖が抑制されるという結果とよく一致する。BMPの腺胃上皮の分化に及ぼす影響について解析中である。
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