研究概要 |
(1)本年度前半までに、中脳・後脳のマーカーのpax-bの発現決定時期が、原腸胚初期に起こるこや、誘導には裏打ちする中胚葉が重要であることを明らかにした(Miyagawa et al,1996)。pax-b遺伝子の発現制御領域の解析は上流5kbまで絞り込み、DNAコンストラクトを受精卵に注入している。この領域だけで十分な特異性を示すが、発現量が内在性に比べて極めて弱かった。 (2)前脳・中脳のマーカーotxの発現開始は原腸胚初期と早く、オ-ガナイザー領域からの直接の誘導の可能性がある。移植実験の過程で、我々はepiblastにおいて誘導シグナルに対する反応性の違い(differential competence)が前後軸に沿ってかなり早い時期から存在することを見出した。即ち、オ-ガナイザーをゼブラフィッシュ胚腹側の種々の位置に移植してotx2の発現誘導領域を調べると、腹側での誘導領域は常に明瞭な後方境界を持ち、その境界はホストのotx2の発現(背側領域)の後方境界と常に一致していた。この境界より後方に誘導源の組織が位置してもotx2の発現誘導は起きなかった。これらの結果はotx2発現に関する(つまり頭部形成に関する)competent regionが腹側を含め動物極を中心にした同心円状にepiblastに存在していることを示している。従って、中枢神経系の前後軸形成には、誘導源の性質だけでなく誘導を受ける側(epiblast)に存在するcompetenceの違いが重要であることが判明した。さらに、このotx2-competent regionの後方境界の成立には、卵黄細胞によって胚盤周縁に同心円状に誘導される中胚葉(Mizuno et al,1996)が関与している可能性が高い。現在、どのような因子がotx2-competent regionの後方境界を決めるか検討中である。
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