研究概要 |
担子菌ヒトヨタケの有性過程とそれに伴う性形態形成は、交配型遺伝子AとBによる支配を受けている。A遺伝子はホメオドメインをもつ転写因子をコードし,B遺伝子はフェロモンおよびフェロモン・レセプターをコードしていることがわかっている。しかし、交配型遺伝子の標的遺伝子については未だ同定されていない。そこで本研究では、交配型遺伝子の下流または近傍で働く遺伝子を解明するために、交配することなくA制御下の性形態形成(pseudoclamp connection)を行なうようになった変異(pcc1-1)を解析することを計画した。前年度において、pcc1遺伝子のクローニング・シークエンシングに成功し、データベースを検索した結果、pcc1はHMGボックスをもつ転写因子であることがわかった。そこで今年度は、まずpcc1のORFを決定するためにcDNAを解析した。その結果,1つのイントロンによって中断される1683 bp のORFが同定された。つぎに,pcc1-1変異をDNAレベルで同定するために,pcc1-1変異株のコスミドライブラリーからpcc1-1遺伝子をクローニングし、シークエンシングを行った。その結果,HMGボックスとC末端の間に位置する211番目のserine残基がnonsense変異を起こしていることが判明した。さらに,pcc1と交配型遺伝子との相互関係を知るために,交配型遺伝子AおよびBがオンの場合とオフの場合で、pcc1の転写量がどのように変化するかをノーザン分析によって調査した。その結果,pcc1の転写量はAオンによってもBオンよっても増大されることが明らかとなった。
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