研究概要 |
本研究は、アフリカツメガエルを実験モデルとして、神経系の形成における免疫グロブリンスーパーファミリー糖蛋白質、コンタクチン(F3/F11)の役割を解明することを目的とする。本年度の研究においては、まずコンタクチンのホモログのcDNAを単離し、その構造を明らかにした。その結果、アフリカツメガエルのコンタクチンは全体的な構造ならびにアミノ酸配列において、他の動物のものと高い相同性を持ち、成体の中枢神経系で幅広い部域に発現していることが分かった(Nagata et al.,Zool.Sci.,13,813,1996)。また、in situハイブリダイゼーションならびに免疫細胞化学的手法により、この分子が個体発生のかなり早い時期に特定の部域に発現していることが確かめられた。とくに、視神経が視覚中枢である視蓋に向かって伸長するのに先立って、そのルートに沿ってコンタクチンの発現が見られることから、視神経による伸長経路の選択との関連が注目される。 免疫グロブリンスーパーファミリーの中で、コンタクチンに類似した構造を持つもの(コンタクチンサブファミリー)がいくつか知られており、中枢神経系の形態形成に特有の役割を果たすと考えられる。そこで新たなコンタクチン様神経接着分子を、ディジェネレートPCR法によりラットの脳において検索した。その結果、新たに2種類のcDNAが単離され、各々NB2、NB3と名付けた(Neurosci.Lett.,218,173,1996)。これらの分子はコンタクチンサブファミリーの他の分子と40%〜60%のホモロジーをもち、ともに中枢神経系に特異的に発現する。しかし、その発現部域には両者の間で明瞭な違いがあり、機能の上での違いを反映しているものと考えられる。
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