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モルモットの心臓には一酸化窒素合成酵素(nitric oxide synthase=NOS)を持つ神経節細胞が分布している。また、NOSを含む神経も心房に広く分布している。このNOS陽性神経線維は心房内の神経節細胞の突起であるかもしれないが、心臓に外から投射している神経細胞の突起であるかもしれない。心臓に達する神経の中では、迷走神経背側核に細胞体を持つ迷走神経の副交感神経節前線維、節状神経節に細胞体を持つ迷走神経の知覚成分にはNOSを持つものが含まれている。
心房に分布するNOS陽性線維の起源を知るために、一側の迷走神経を頚部で切断し、心房のNOS陽性線維の変化を観察した。
右心房に分布するゆるいNOS線維網はどちら側の迷走神経切断例でも残存しており、右迷走神経のみに依存しているのではないことがわかった。正常例でも切断例でも右心房の大静脈基部で、陽性細胞の突起がこの線維網に加わっている像がしばしば観察され、この線維網が少なくとも一部は心臓神経節の神経細胞の突起からなることがわかる。心房中隔および左心房の肺静脈の基部で神経節内で神経細胞の周りを取り囲んでいた線維は左迷走神経に由来することが明らかになった。過去のわれわれの研究でこのNOS陽性線維終末は神経節細胞にシナプスを作っていることは明らかなので、この線維は左迷走神経に由来する副交感神経の節前線維と思われる。左迷走神経を切断しても心房中隔から心室中隔にかけてのNOS陽性線維は多数残っている。とりわけ太い無髄陽性線維は対照例と同じように多数観察されたので、これらの線維は、心臓の壁にある神経節細胞に由来するものすなわち、節後線維と考えられた。
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