視床のシナプス構築にみられる体性機能系と内臓機能系の中継様式の違い

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08680810
• 研究機関: 東京医科歯科大学
• 研究代表者: 中村 泰尚 東京医科歯科大学, 医学部, 教授 (70025625)
• 研究分担者: 和泉 正英 東京医科歯科大学, 医学部, 助手 (70262186) ; 大竹 一嘉 東京医科歯科大学, 医学部, 講師 (10168966)
• キーワード: 視床 / VL / VA / PVT / MGN / 視床網様核 / 軸索内輸送 / 電顕的三次元再構築

研究概要

前年に続いてネコとラットを用いて実験を行い、体性機能系の視床の運動核として外側腹核(VL)と、前腹側核(VA)を、感覚核として内側膝状体核(MGN)を、内臓機能系の核として視床室傍核(PVT)を観察対象とした。
VLについては、P終末の中に含まれる視床網様核(TRN)由来の終末をより正確に知るために、TRNに順行性標識物質を注入して、標識された軸索終末を連続切片から三次元的に再構築した。前年に予想したとおりにtriadを含む回路とは独立して働いていることが明確になった。
同様にVAにおけるTRN由来の軸索終末を調べるために、TRNに標識物質を注入して電子顕微鏡で観察した。この終末はやや大型のブトンの中に多形性のシナプス小胞を含んでいた。脚内核由来の軸索終末(ELP)も同じ型であって、標識なしでは同定が困難であると考えられた。TRN終末はしばしばtriadを形成し、ELPや、円形のシナプス小胞をもつ軸索終末に対してシナプス後部となることが多く、VLの場合と異なることが判明した。
聴覚を中断するMGNについては、大脳皮質の聴覚に関するいくつかの皮質間の連絡を明かにすると同時に、MGNの亜核とこれら皮質領域の関連を、軸索輸送標識法によって詳細に検討した。その結果、電子顕微鏡的にどの亜核をどのように標識して観察すべきかという戦術をたてることができた。
PVTから辺縁系大脳皮質と側坐核の両者に投射することを二重標識法によって明かにしたことをさらに発展させた論文が受理され、さらに弧束核-PVT-辺縁系皮質、弧束核-結合腕傍核-辺縁系皮質の連絡を電子顕微鏡的に証明する仕事が軌道に乗っている。

研究成果

• [文献書誌] Ruggiero,D.A., Mtui,E.P.Otake,K. & Anwar,M.: "Vestibular afferents to the dorsal vagal complex: substrate for vestibular-autonomic interactions in the rat." Rrain Research. 743. 294-302 (1997)
• [文献書誌] Sato,F.,Nakamura,Y. & Shinoda,Y.: "Serial electror.microscopic reconstruction of axon terminals on physiologically identified thalamocortical neurous in the cat ventral lateral nucleus." Journal of Comparative Neurology. 388. 613-631 (1997)
• [文献書誌] Otake,K. & Nakamura,Y.: "Single midline thelamic neurons projecting to both the ventral striatum and the prefrontal cortex in the rat." Neuroscience. in press. (1998)
• [文献書誌] Izumi,M. & Nakamura,Y.: "The organization of the ipsilateral corticocortical projections of the middle sylvian gyrus (A II)in the cat cerebral cortex : an anterograde and retrograde tracing study." Brain Research Bull.(in press). (1998)