研究概要 |
1)大脳皮質内で行なわれる情報処理過程を理解するために、皮質の局所神経回路の構成原則を明らかにしたい。まず、Tetramethylrhodamine-Dextran amine(TMR-DA)の逆行性取込みにより大脳皮質VI層の出力ニューロンを標識したラット脳スライスを用意する(T.Kaneko et al.,J.Neurosci.Methods,65:157-165,1996)。微小電極を用いて細胞内記録を取り、Biocytinを細胞内注入する。大脳皮質スライスを固定後,Glutaminase,Parvalbu-minとCalbindinに対する抗体と三重蛍光法を用いて、記録された細胞がグルタミン酸作動性の興奮性ニューロンであるかGABA作動性の抑制性ニューロンであるかを判定する。細胞内記録されたニューロンをさらに青黒色に染色し、特に神経軸索の分布に注目する。一方、逆行性に標識された大脳皮質出力ニューロンを抗TMR抗体を用いてGolgi染色様に赤く染色する。このようにして細胞内染色されたニューロンの皮質内軸索側枝が皮質視床投射ニューロンにどの様に入力するか検討した。IV-VI層の錐体細胞からの入力に比べて、II/III層の錐体細胞からの入力は少なかった。 2)赤外光ノマルスキー微分干渉顕微鏡を用いたガラス微小電極の細胞内刺入法を開発している。775nm前後の赤外光を用いてスタートしたが、現在、赤外光専用のPolarizer/Analyzerを用いることと900nm前後の赤外光を使用することで100ないし200μmの深い部位のノマルスキー像を改良できた。さらに、1100nm前後の赤外光を試みるべく、新たな赤外フィルターと赤外光用ヴィデオカメラを適用する予定である。したがって、現在のところ実際の実験段階ではなく技術的な開発段階にある。
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