研究概要 |
本年度は初年度であり,当初計画した次の点について検索を完了ないし続行中である。 1.病理形態学的検索 歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)剖検例13例の各症例について,中枢神経系の肉眼的および組織学的病変部位と重症度を明らかにした。ただし,主病変部位である歯状核,赤核,淡蒼球,ルイ体の病変の重症度については,残存神経細胞数を組織定量的に数える必要があり,13例中5例については検索を終了したが,他の例については現在続行中である。 2.分子遺伝学的検索 13剖検例の各症例について,前頭葉のフォルマリン固定パラフィン包埋切片を用いて,DNAを抽出した。次いでKoideら(Nature Genet6:9-13,1994)およびNagafuchiら(Nature Genet6:14-18,1994)の方法に準じて,PCR法の後アガロースゲルおよび5%ポリアクリルアミド電気泳動法により,各症例のCAGリピート数を検索した。この検索は,当初の計画通り13例全例について終了した。得られたCAGリピート数は55〜80にわたっており,従来DRPLAで報告されているように増大していた。 3.分子遺伝学的異常と病理形態変化の相関の有無についての検討。 DRPLAの病変部位である歯状核,赤核,淡蒼球,ルイ体における残存神経細胞数の組織定量的検索が未だ検索途上であるため,最終的な結論は当初の計画通り来年度に出す予定である。現時点では,脳重量とCAGリピート数が負の相関を示す傾向があること,主病変以外の部位(被殻,尾状核,小脳プルキンエ細胞および顆粒細胞など)の組織学的重症度とCAGリピート数との間には相関はみられないことなどの成績が得られている。
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