研究概要 |
昨年度、我々はInterleukin-1β(IL-1β)の中枢性作用とα-MSHによる修飾を調べた。 IL-1β10pgをラットの脳室内へ投与すると、90分後に視床下部室傍核(PVN)で多くのFos蛋白免疫陽性ニューロンが観察された。また、30、60分後では熱に対する知覚過敏が惹起された。これらの反応はα-melanocyte stimulating hormone(α-MSH)30ngの前投与によって抑制された。本年度はIL-1βの全身性作用を検討する目的でラットの腹腔内へIL-1βを投与し、PVNでのFos発現に対する薬物量依存性(10pg,1ng,10ng,100ng,1μg,5μg)、時間変化(60,90,120,180,240,360分)とα-MSHの前投与による修飾を調べた。 その結果、(1)IL-1β投与後90分でPVNのFos免疫陽性ニューロン数を観察すると、1ngの投与から微弱な反応ながらFos陽性ニューロンの増加が認められた。このFos陽性ニューロン数は投与量依存性に増加し、1μg、5μgでは強い陽性反応を示すニューロンが数多く観察された。しかし、下垂体中葉のα-MSH含有細胞にFosの発現は認められなかった。(2)IL-1β1μg投与後、PVNのFos発現を経時的に観察すると180分で最も多くの陽性ニューロンが観察された。(3)IL-1β1μg投与後180分でのPVNのFos発現はα-MSH10mgの前投与によって抑制された。以上のことから、IL-1βによるPVNニューロンの活性化は中枢性に惹起されるだけでなく、全身性にも引き起こされ、この反応はα-MSHの前投与によって抑制されることが明らかとなった。しかし、下垂体中葉のα-MSH含有細胞の活性化を示す所見は得られなっかった。明年度は中枢内のα-MSH含有ニューロンとIL-1βの関わりについて検索する。
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