研究概要 |
Interleukin-1β(IL-1β)は知覚過敏を誘発し、α-melanocyte stimulatinng hormone(α-MSH)がこれに拮抗して作用するという生理学的な報告がある^*。このIL-1βによる生体応答に脳のどこが関与するかは明らかでない。本研究ではFos蛋白の発現を指標にIL-1βよって活性化される脳の部位を検索し、更にα-MSHの抑制効果を形態学的に調べた。 この結果、IL-1β10pgの脳室内投与で知覚過敏が観察され、視床下部室傍核(特に内側小細胞部)と脳内のα-MSH含有ニューロン存在領域である弓状核にFos蛋白の発現を認めた。しかし、α-MSH産生器官である下垂体中葉にはFosの発現は観察されず、IL-1βの脳室内投与のによるの中葉細胞の活性化を示すデータは得られなかった。また、IL-1β10pgによる室傍核と弓状核のFos発現、および知覚過敏はα-MSH30ngの脳室内前投与によって抑制された。 以上のことから、IL-1βによる知覚過敏に伴って室傍核、特に内側小細胞部のニューロンが活性化し、これをα-MSHが抑制することが形態学的に明かとなった。また、α-MSH含有ニューロンが存在する弓状核がIL-1βの抑制のため活性化することが示唆された。 ^*:Oka,T.,et al.(1993)Brain Res.,624:61-68.
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