ネコ27匹を用いて、音刺激を与えながら細胞内記録を行った。 総数約150個の細胞から記録を取った。そのうち約35個の細胞には、単一細胞レベルでの形態解析用に記録終了後細胞内にバイオサイチンを電気泳動的に注入した。細胞の反応は音刺激に特徴的に応じる興奮性シナプス後電位(EPSP)から活動電位が立ち上がり、それを計数することにより細胞内記録法でも最適周波数を多くの細胞で決定することができた。さらにEPSPに続いて一部の細胞では抑制性性シナプス後電位(IPSP)が認められた。特に3層の錐体細胞で著名なIPSPを認めた。IPSPは最適周波数の隣接周波数を音刺激として与えた場合によく引き起こされた。一方音刺激の音強度をあげていくと活動電位の発火数が減少するnon-monotonicな細胞反応では、IPSPが生じることはなかった。さらに反応をより引き起こす一側の耳の刺激単独で生じる活動電位の発火数が、両耳刺激をすると減少するEI細胞でも明瞭なIPSPを生じることはなかった。このような細胞の反応特性を説明する新しい神経結合を考慮しなければならないと思われる。 最終年度はこのような生理学的反応特性と錐体細胞の樹状突起形態、さらには軸索投射様式に相関関係があるかどうかを、記録後バイオサイチンを注入した細胞を再構築して、検討する予定である。
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