研究概要 |
いくつかの神経変性疾患ではグリア細胞にもニューロンの神経原線維変化(Neurofibrillary tangles ; NFTs)に相当する構造物が形成されることが知られており、Glial fibrillary tangles (GFT s)と名付けられている。GFTsの形態、出現の有無を多数の疾患の脳標本で検索し、GFTsをそれぞれの形態と母細胞の種類からtuft-shaped astrocytes, thornshaped astrocytes, coiled bodies, argyrophilic threadsの4型に分類した。さらに各タイプのGFTsの疾患親和性を明らかにした。GFTsを免疫組織化学的に検討し、ニューロンのNFTsと比較した。その結果、GFTsとNFTsは検索したすべての抗タウ抗体で陽性を示し、同じ性質の異常リン酸化タウタンパクで構成されているが、NFTsがubiquitin, heparan sulphate, α1-antichymtripsin, apolipoprotein Eなどのタウ付随タンパクを伴うのに対して、GFTsはこれらのタウ付随タンパクを伴っていなかった。さらにタウタンパクを構成するisoformについて知るために、タウのN端側の挿入部分であるexon2および3に対する抗体を作成し、検索したところ、GFTsではNFTsと異なりexon2,3を含まない短いタイプのisoformであることが明らかになった。GFTsを免疫電顕法で検索した結果、GFTsはしばしば線維形成に乏しく、無構造なタウ陽性物質で構成されていた。線維形成に乏しく、タウ附属タンパクを伴わないというGFTsの特徴は、NFTsの前段階として注目されているpre-tanglesによく似ていることが分かった。これらの結果は異常リン酸化タウが線維化する過程の解明に役立つ情報である。
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